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グローバル内部通報制度のポイントとツール導入の意義とは?

弁護士法人GIT法律事務所
代表社員 / パートナー
西垣 建剛 先生

2000年から2020年まで国際的法律事務所であるベーカー&マッケンジー法律事務所に所属し、同事務所のパートナーを10年以上務める。国際訴訟・紛争解決、国内外の上場企業の不正に関する調査、米国FCPA(the Foreign Corrupt Practices Act)のコンプライアンス、製薬・医療機器メーカーのコンプライアンスを行う。不正調査、米国FCPAに関して、多数のセミナーで講師を務める。その他、グローバル内部通報制度の構築、国際労働事件の解決、米国クラスアクション、GDPRを含む個人情報保護法関連のコンプライアンスなどの法的助言も行う。他方、国際的企業買収、業務提携、合弁企業の設立においても、国内外の主要上場企業に対し法的サポートを提供している。
[関連著書]「グローバル内部通報制度の実務」2022年5月

目次

グローバル内部通報制度の導入の意義

グローバル内部通報制度とは、海外拠点の役職員が、直接、本社の統一的な通報窓口に通報することができる制度のことです。欧米の国際企業のほとんどはこの制度を導入しており、本社所在国の通報制度との境目なく海外拠点に展開し、本社が一括して各拠点からの通報を管理しています。他方、日本企業は、海外に積極的に展開している企業であっても導入していない場合が大多数です。

これは、海外拠点管理における重大な「ギャップ」と言わざるを得ません。なぜなら、今般、不正・不祥事の過半数は内部通報により発覚すると言われており、海外拠点の方が国内よりも目が届きにくく高リスクであるにもかかわらず、海外拠点に内部通報制度を導入しないことは内部統制上の大きな問題と言えます。

しかし、近年、日本企業の中でも、グローバル内部通報制度導入の必要性が認識されつつあります。というのも、ご存じの通り、2022年に改正公益通報者保護法が施行され、国内では従業員300名超の事業者に関しては、内部通報制度の整備が義務化され、消費者庁の指針に基づき体制を整備する必要があります。この状況に鑑み、監査役、社外取締役等から、「海外はどうなっているのか?」という指摘を受け、グローバル内部通報制度の導入に踏み切る企業が増えています。

現地経営陣からの独立性

従前より、海外拠点をもつ日本企業は、その海外拠点の一部で現地完結型の内部通報制度を導入してきました。たとえば、タイ現地法人が現地の法律事務所を窓口に起用して、現地従業員からの通報を受け付けるというものです。しかし、現地法律事務所は通報を受け付けた後、タイ現地法人の経営陣に報告することになるから、現地経営陣が関与する重大な不正(贈収賄、独禁法違反、不正会計、脱税、キックバック等)の報告は期待されないことになります。

このような重大不正こそ、グローバル内部通報制度を通じて日本本社が早期に発見・是正すべき問題なのです。そこで、グローバル内部通報制度導入において、その運用は現地経営陣から独立した形で、日本本社が統一的に運営することが必須となるのです。具体的には、通報受付システムへのアクセス権は、特段の事情がない限り、日本本社の法務・コンプライアンス担当者等のいわゆる「従事者」のみに限定し、現地との情報共有は日本本社が決定する必要があります。

通報受付システムの構築

筆者の私見ではありますが、「大手企業がグローバル内部通報制度を導入するには、内部通報受付/管理ツールの導入は不可欠である」と考えています。

たしかに、選択肢としては、

  • 日本本社に通報用のメールアドレスを設定する
  • 本社のウェブサイトに(お問い合わせフォーム等の簡易的な仕組みで)通報受付の機能を持たせて、それを海外拠点に広報を行う

という方法が考えられます。しかし、上記の方法では、どの言語で通報が来るかもわからない中、多言語通報に十分な対応が出来ません。また、システムの安定性に不安が残り、個人情報保護の観点からのセキュリティ体制を確保することができません。

上記の選択肢以外には、本社が各国の弁護士事務所と契約をして通報を受け付けてもらうという方法もあり得ます。しかし、年間1件通報があるかないかでは、現地法律事務所で受付担当者が曖昧になってしまい「忘れ去られる」リスクがあるのです。

したがって、信頼性の高いシステムを構築するためには、多言語対応が可能である強固なセキュリティをもった内部通報受付/管理ツールを導入することで「通報の受け損ね」を避け、そのツールを通じて、通報案件の処理の状況、通報数の管理などを一括管理する必要があります。

電話受付について

グローバル内部通報制度の通報受付方法として、近時はWeb受付が一般的ですが、本当に電話受付が必要か、については慎重に検討する必要があります。近年、固定電話による通信頻度が激減し、他方、(むしろ途上国であればあるほど)スマートフォンが普及している現在、軽微な不正ではなく贈収賄などの重大不正を発見することを主眼にするためには、Webによる通報受付のみで対応すれば十分であるという考え方もあります。この点は、通報対象者の現地従業員のリテラシーに鑑み、各社がそれぞれ検討すべきでしょう。

大量の通報がきたらどうするのか

「従業員が多い海外拠点で内部通報制度を導入すれば、海外の拠点から大量の通報が来て、限られた日本の法務コンプライアンス部門のリソースではパンクしてしまうのではないか」という不安を持たれる場合も多いことでしょう。しかし、当初から大量の通報が来るというケースは極めて稀であり、むしろ、通報件数が伸び悩むことの方が多いのです。だからこそ、日本本社は、しっかりと制度の広報を継続して現地役職員の認知度を確保し、信頼を勝ち取って通報件数を健全なレベルまで伸ばすことの方が重要なのです。

また、それと並行して、現地コンプライアンス担当者との連携を密に行い、比較的軽微な通報に関しては現地で調査可能な体制を構築していく必要があります。

現地法令の遵守

グローバル内部通報制度の導入にあたり、現地法令の遵守が必要不可欠です。特に、GDPRを筆頭とする個人情報保護法制、現地労働法(欧州のWorks Council制度)、及び現地の公益通報者保護法(EU公益通報者保護指令により制定された国内法)等の遵守が必要です。近時の通報内容として多いのが個人情報保護に関するものですが、通報制度自体が現地法に違反していては本末転倒です。したがって、導入に当たっては、各国法を調査し、それを遵守した体制構築が必要となります。

※本内容は2023年7月取材当時の情報です。
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